更新日: 2022.12.05
『鮎のふるさと』(8集)

 初期『美味しんぼ』の中でも読者にトラウマ級の衝撃を与えたといえばこのエピソードです。

 酔って東京駅の階段から転落し、捻挫で入院となった京極さん。見舞にきた山岡に、退院したら鮎のテンプラを食べさせて欲しいという約束をします。 そこへ当然のようにやってきたのは海原雄山。なにせ北海道やオーストラリアでも鉢合わせる二人ですから、もはや共通の知人の入院先なぞ必然性があり過ぎて出会うに決まっているのです。

 山岡にご馳走してもらうと聞くや「それほどのものが作れかどうか」といつもの悪態。「京極さんが変なまずい物を食わされるのを、黙って見ているにしのびなくて…」とかちょっとひどいぞ雄山。病室で口論なんかされちゃ京極さんが気を遣うでしょ!

 そんな訳で(やっぱり京極さんが気を遣って)鮎のテンプラ対決をすることになったのですが、テンプラと言えばかつてテープレコーダーで一本取られた因縁の食材。今度は負ける訳にはいきません。どこの鮎が一番か調べるくだりでは『釣りバカ日誌』のキャラクターたち(誰が描いたのだろう?)に助言を求めるシーンも。ちなみにこのシーンもアニメになってますので本家より13年も早いアニメ化なのでした。

 いよいよ当日を迎え、京都は保津川の鮎を提供した山岡。一同もちろん高評価。ところが雄山の用意したテンプラを食べるや京極さんのリアクションが一変します。



この顔!

 テンプラをくわえたまま涙と鼻水を垂れ流すハゲのおっちゃん!そりゃあみんなも「京極さん!!どうしました!?」って言うよ!

「なんちゅうもんを食わせてくれたんや… なんちゅうもんを…」
「これに比べると山岡さんのはカスや。」
人にご馳走してもらってる立場で「カスや。」はないでしょ京極さん……。

 もはや勝敗は誰の目にも明らか。ここぞとばかりにギザギザの吹き出しで16行も叫ばれた挙句「笑わせるなっ!!」と一喝されて山岡は完全沈黙してしまいます。快気祝いの場でそんな大声で説教するものだから完全に空気が悪くなってしまいましたが、京極さんだけは自分の世界に浸ったままうまいうまいと笑顔で四万十川の鮎を食べ続けているのでした。主賓が納得してるのなら、まぁ……。